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高森明勅
2020.6.28 06:00政治・経済

憲法の「尊重・擁護」義務

憲法99条に以下のような規定がある。
「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、
この憲法を尊重し擁護する義務を負う」
ここで「天皇(又は摂政)」が“最初”に挙げられているのは、
憲法が予想する国家の秩序において、最も重要な地位を占めている
からに他ならない。
これは、第1章(!)に「天皇」の規定が置かれているのに
対応する(ちなみに「天皇又は摂政」と「国務大臣…その他の
公務員」は別の範疇と理解すべきだろう)。
一方、「義務を負う」対象に“国民”が含まれていない。
これは何故か。
一般的には、国民の人権保障を掲げた憲法を国民が尊重・擁護
すべきことは余りにも当然だから、とか、近代的立憲主義において
憲法の尊重・擁護は、国民の側から国家権力に課するものだから、
などと説明される。
れに対し、別の理解の仕方も示されている。
「『憲法の敵』『自由の敵』にも憲法上の自由を保障すべきかどうか…
日本国憲法が、公権力の担当者だけを挙示してその憲法尊重擁護義務
を規定するという方式をとっていることは、国民の憲法忠誠を制度化
するやり方をとらないという選択を意味する。
すなわち、『憲法の敵』にも憲法上の自由をみとめること、
『すべての市民に対し、すべての政治的教理に関し完全な思想と
宣伝の自由をみとめることを、それに伴う危険にもかかわらず、
むしろ好ましいと考える』(第2次大戦末期のフランス共和国
臨時政府下に設けられた、憲法問題委員会の報告書)、
という選択を意味している」(樋口陽一氏)
いわゆる“護憲派”の重鎮と見られている
樋口氏の学説だけに興味深い。
【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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